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静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

ラウペ

上映中!『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』

1941年12月末、ヨゼフ・ガブチーク(キリアン・マーフィ)とヤン・クヴィシュ(ジェイミー・ドーナン)の二人がナチスドイツの保護領となっているチェコ領内にパラシュート降下しました。保護領の副総督としてチェコを統治しているラインハルト・ハイドリヒを暗殺するために・・・
第二次大戦のなかでも特に凄惨なエピソードとして知られるハイドリヒ暗殺計画「エンスラポイド作戦」の顛末を描く作品としては、本作が「死刑執行人もまた死す」「暁の7人」に次いで3回目の映画化。

映画の冒頭、英国をはじめとする連合国側とドイツに事実上併合されたチェコを巡る状況を説明する少し長めのクレジットが入ります。
第二次大戦前夜のチェコはドイツ系住民が多く住むことからヒトラーはドイツと隣接するズデーテン地方の割譲を要求し、1938年のミュンヘン協定により、英国とフランスはチェコへの進駐を認めてしまいました。国家としての実体のなくなったチェコの指導部は第二次大戦中英国に亡命政府を樹立しましたが、ドイツの戦時体制に組み込まれ保護領となったチェコ領内では、連合国側と枢軸側の狭間で微妙な立場に立たされていたのです。このようななか、ハイドリヒの暗殺は、チェコの亡命政府・国内のレジスタンス双方がナチスに対して明確な抵抗の意思を示せるのかどうかが問われる極めて重要な計画だったのです。
ユダヤ人の「最終的解決」を決めた「ヴァンゼー会議」の主催者であるハイドリヒはヒムラーに次ぐ親衛隊No.2の地位にあり、ヒトラーの信任も厚く、ナチスの次世代の指導者として最も枢要な地位にある人物でした。
ただ、ハイドリヒの暗殺を実行に移せば、苛烈な報復を伴うことが火を見るよりも明らかであったため、レジスタンスの中でも作戦の決行には否定的な意見を持つ者も多く、ガブチークらには相当の困難が待ち構えていました・・・
歴史的事実は既に周知のことであり、事の顛末を知っている方には説明の必要はないと思いますが、予備知識なく映画を観る方には上記の前置きを頭に入れて頂ければ、映画によりスムーズに入り込むことができるかと思います。

ハイドリヒ


なんといっても全編緊張感漂う本作の雰囲気はガプチークらのおかれた困難な状況をありのままに伝え、無駄な要素を極力排することで、そこに帯同しているかのようなリアルさがあります。ガブチーク演じるキリアン・マーフィーは「ダンケルク」でも大変印象的な演技を見せていましたが、本作でも危険を顧みず任務を遂行しようとするオーラが全身から漂い、強烈な印象を残します。
前半の緊張感溢れる「静」からハイドリヒ襲撃とその後の「動」に転じる映画の転換はある種のアドレナリンが放出されるようで、観る側も脈拍が徐々に早くなっていくのを実感します。
後半での鬼神のように闘うキリアン・マーフィーらの神々しいまでの姿は永く脳裏に焼き付くのではないでしょうか。

日本公開があるのか現時点では不明ですが、来年には4回目の映画化となる「HHhH(原題)」が公開予定であり、ハイドリヒ暗殺計画は映画の題材として普遍的な意味を持つテーマなのだと思います。


『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』
上映中〈10/27(金)まで上映〉
連日①10:00 ②15:40
HP http://shoot-heydrich.com/




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Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 11:39

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