なべ

拘置所で死刑囚と面会し、自分の罪と向き合い悔い改める手伝いをする教誨師、佐伯。
彼が向き合うのは六人の死刑囚。彼らの罪は佐伯との会話の中で徐々に明らかになっていくが、どれも私たちの社会の中で現実に起きた事件を想像させる。もしかしたら自分や身近な人が被害者になっていたかも…と思えるからか、台詞のひとつひとつに聞き入ってしまう。次々と佐伯の面談相手が変わっていくのだが、死刑囚の感情の浮き沈みや、佐伯への信頼が増していく様子などが狭い面接室での場面でしっかりと伝わってくる。


(C)「教誨師」members　

　まるで私自身が佐伯牧師と向き合って話しているような感覚になる。彼の口から語られる聖書の話。「イエス様はこう言っています。」いったいだれだけ死刑囚の耳に、心に届いているのだろうか、報いを求めない生き方になんともいえない気持ちになる。
　本作が最後の主演作となった大杉漣さん、強面の役から優しいお父さんまで演じて人気者だったが惜しくも今年はじめに亡くなられた。たくさんの出演作がある中でご自身プロデュースで最後にこのようなテーマを扱ったのかと、今なら深く考えてしまう。素敵な笑顔はあまり見られないが、最後にがっつり漣さんと対峙することができた。
作品中の台詞やメッセージには聖書の福音書が引用されているが、事前に知識を入れなくても十分楽しめる、私は見終わった後にいろいろと調べてしまったが。


(C)「教誨師」members

　漣さんと面会する死刑囚を名バイプレーヤーつながりの光石研、静岡ではコンコルゲンで有名な古舘寛治、大女優、烏丸せつこ、自己中心的な若者を劇団で活躍する玉置玲央が演じている。この玉置はまた別の映画でも活躍するような眼力を持っていた。
　静岡シネギャラリーでは11月23日（金）までの上映。
なんと17日（土）の1回目の上映後には佐向大監督の舞台挨拶も予定されている。
作品を見終わった後の感想や質問をぶつけてみる貴重な機会、ぜひシネギャラリーまで!!


『教誨師』
11/10（土）～11/23（金）
連日①13：45　②17：30
＊11/17（土）13：45上映後、佐向監督の舞台挨拶あり

http://kyoukaishi-movie.com/