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静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

ラウペ

ままならない人生にも、美しい瞬間がある『希望の灯り』

現代か、少し前の東西統一後のドイツ。旧東ドイツ地域にある大型スーパーで在庫管理の職に就いたクリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)。食品担当のマリオン(サンドラ・フューラー)に惹かれつつ、日々の仕事をこなしていく・・・

ままならない人生にも、美しい瞬間がある『希望の灯り』

クリスティアン担当の先輩をはじめ、職場の同僚はぶっきらぼうで、ことさら親切とはいえないが、新入りのクリスティアンにそれとなく気を遣いながら、新しい職場の仕事内容やルール(ときにはサボり方も)を教えていく。
淡々とした描写の積み重ねでだんだん職場の様子が分かるようになっていきますが、統一前はトラックの配送会社だった関係で、そこからスーパーの社員となった人も多いらしい。生活の質はあまり高いとはいえない様子ですが、スーパーは会員制のかなり大きなところで、従業員に課すマニュアル的接客マナーや、毎日出る大量の廃棄食品など、資本主義社会のシンボル的存在。従業員の生活とのギャップがそれとなく旧東独地域の暮しに大きな格差があることを窺わせます。

クリスティアンがサンドラに好意を持っていることはすぐに同僚に気付かれますが、そこで既婚者であることが明らかになります。
過干渉にならないように、それとなく見守る同僚たち。
分かっているけど、深入りしない、話さなくてもそれとなく伝わる連帯感・・・この、人々の微妙な距離感と抑制された描写が大変心地よく、物語の成り行きを見守ることになります。

希望の灯り2

これといった大きなイベントもなく、そのまま終わるのかな?というところでちょっとした変化が現れるのですが、そのことによって起きるさざ波のような物語の推移もまた、この作品らしい落としどころが用意され、ほんのりとした温かみを感じながら劇場を後にすることができました。

原題は”In den Gängen”『通路にて』といったところ。
巨大スーパーの通路を舞台にささやかな人間模様を映しだすこの映画に相応しい題名だと思います。


『希望の灯り』
4/27(土)~5/10(金)連日①12:00
http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/



(C)2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH


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Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 16:25

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