パリ郊外の看護学校に通う看護師の卵1年生の体験を追うドキュメンタリー。
全体は3部に分れ、授業でのさまざまな初体験の模様、実際の現場での実習、カウンセラーによるインタビューの模様を追います。
病院に行ったときなど、看護師の人にはさまざまなところでお世話になっていますが、そこで感じるのは非常に多様な看護の実務を手際よくこなしていく専門性の高い職業だということ。
とはいえ、誰もが最初からプロの看護師なのではなくて、その第一歩は我々普通人と同程度の医療知識しかない、ということです。
手の洗い方や患者の起こし方、人形を使っての注射の仕方、脈の取り方といった基本的な実習の最初の場面をじっくり描いていきます。
指導教官の講義内容は非常に丁寧かつ詳細で、そこにはごく小さな動作や注意にもそれぞれ意味や目的があること、それを怠るとどのような結果に繋がるのかといった注意も行われ、この方面の素人である一般人にとっても非常に参考になる場面が続きます。
そこで看護師の卵が感じる驚き、端緒に就いたばかりの山の高さを、私たちも同様に思い知ることになるのです。
実習の場面になっても、採血や抜糸などの実務、ギプスの外し方など、実際の患者の看護業務と患者との接し方といった看護師に必要な実務の入り口を学ぶ姿を描いていきます。
カウンセラーとの面談の場面では実習中に体験したことや、今思っていること、「死」との直面、悩みごとなどが明かされ、さまざまな体験をしてきた看護師の卵の心の中を覗き見ることになるのです。
その多くがまだまだ始めたばかりという「1年生」らしい感想なのですが、そのことがこれからさまざまな医療知識や看護の実務をこなしていくことに加え、その根本は「人と接していく仕事」だという、基本的な部分に気付かされるのでした。
実務の面でもメンタルの面でも、だれもが最初から一人前なのではなく、さまざまな葛藤の中で成長していくのだ、ということがリアルなイメージとして伝わってきました。
これは看護師という特定の職業だけに当て嵌まるのではなくて、どのような職業にも当て嵌まる普遍的な過程といえるでしょう。
学生さんや新入社員なら仕事のはじめに覚える戸惑い、ベテランの人には上司として後輩への指導や配慮の仕方、といった基本的に大切にすべきさまざまな要素を改めて体験できる作品だと思います。
今度病院に行くことになったら、看護師さんの言うことには素直に従いたい、と思うのでした。
『人生、ただいま修行中』
12/7(土)~12/20(金)連日①12:00 ②17:25
https://longride.jp/tadaima/
©Archipel 35, France 3 Cinéma, Longride -2018
Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at
18:02