eしずおかイベント情報

静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

ホール上映情報

息子の失踪から10年。エレナは光をもとめて旅に出る…『おもかげ』

離婚した父と海に行っていた6歳の子供から母親のエレナのところに電話がかかってくる。父がクルマに戻ったきり帰って来ないという。必死で息子を安心させ、警察や知人に連絡し、息子を捜そうとするが・・・
それから10年、息子を失ったエレナは海辺のレストランで店長として働いていた。新しい彼氏も出来て心の平穏を取り戻したかに見えたが、あるとき亡くした息子に似た少年に出会う・・・




冒頭の部分は当初短編として公開され、その後の部分を新たに追加して今回の長編となったとのこと。
どこに居るのか分からない子供との電話だけのやりとりは緊迫感に溢れ、掬った水が指先から抜けていくように子供が失われつつあるのに何もできない絶望感が観る者に大きなインパクトを残します。
エレナが受けたトラウマの大きさを原寸大で、そのまま体験させられた観客としては、エレナがそのトラウマからなかなか抜け出せずにいることが良く理解できるのです。
なので、息子が生きていたらちょうどこのくらい、という歳の、息子にそっくりなジャンの登場がエレナの心に決して小さくないさざ波として訪れることは容易に想像できます。
とはいえ、ジャンに近づき、ジャンもまたエレナに惹かれていくさまは、果たして母性によるものか、それとも道ならぬ恋というべきものなのか?という、微妙な部分で測りかねる部分であり、また物語の先が読めない不安定さが、一種のサスペンス的要素となっていきます。



エレナの彼氏のヨセバはエレナのトラウマを理解しているのですが、ジャンの登場がヨセバにとっては一種の不安材料となります。
ヨセバの反応は男の心理としては致し方ないところかと思うのですが、ヨセバに対するイメージはおそらく男性と女性ではかなり異なるものになるのかな、という気がしました。
物語はエレナとジャンの関係を軸に、その周囲の動揺と一種のヒステリックな反応の連鎖を生んでいきます。
エレナがジャンに特別の親しみを覚えるも、息子を失った喪失感はやはりなかなか解決しておらず、なお一層ジャンに傾倒していくさまは周囲の人々の理解の及ばないところであり、それを理解できる(というより、寄り添うという方が正しい)のは、おそらく冒頭の部分を観た観客だけではないかと思います。

それぞれの登場人物がそれぞれの向かうべきところを見定め、物語が閉じられるときに、エレナの心に去来するもの、ジャンに対する思いの中身は何だったのか、それが明らかになるところをほんの一瞬の、さりげない描写で締め括るところに大きく心を動かされるのでした。

『おもかげ』
2020/11/27(金)~12/10(木)迄上映
2020/11/27(金)~12/3(木)
①17:05~19:20
2020/12/4(金)~12/10(木)
①12:20~14:35


Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 11:16

忘れられない夜になる 『パブリック 図書館の奇跡』

シンシナティの公共図書館に勤めるスチュアートは毎日図書館に通うホームレスたちと顔馴染みだったが、以前体臭が原因で退去させた男から彼と図書館が訴えられてしまう。折しも記録的大寒波の到来によりシェルターがどこも満員となったことから、常連のホームレスたちから「退館せずにフロアを占拠する」と宣言されてしまった・・・


占拠事件が起こる前に公共施設あるあるな状況を織り交ぜつつ、ホームレスと図書館の関係を丁寧に描き、寒波によりホームレスが占拠に至る事情を分かりやすく説明する前半部分は適度なユーモアと登場人物たちとの程よい距離感の描写で、本当は根深い社会問題をテーマとしているこの作品を過度に重くならない程度にコントロールすることに成功しています。
そのあたりのサジ加減の絶妙さは、監督・脚本・主演を務めるエミリオ・エステベスのセンスによるところが大きいのだろうと思います。
彼のメガネの奥に漂う抑制的な性格と、どことなく飄々とした物腰が作品全体のイメージを固定するのに大いに貢献しているのは間違いありません。

最初の訴訟沙汰のときから登場する検事役のクリスチャン・スレーターは『天才作家の妻』と同様、自分のことしか頭にない小物役がすっかり板についた感がありますが、際立って個性的な登場人物の少ない本作にあっては濃い目のキャラクター。占拠に巻き込まれて従属的だったスチュアートが主導的になっていく動機づけを行う役回り。

占拠事件の解決のために呼ばれるネゴシエーター担当の刑事役のアレック・ボールドウィンは息子がオピオイド系薬物中毒で家出、捜索のために休職を依頼中という役柄。
オピオイド系薬物は『ベン・イズ・バック』でも描かれた非常に依存性の高い薬物で、2017年にはアメリカの公衆衛生上の非常事態が宣言されるほどの社会問題となっています。



次第に明らかになるスチュアートの過去と、それを利用して事件を収束させようとする検事、事件をセンセーショナルに報道したいテレビの司会者など、中盤ではやや類型化された展開に傾きかけるものの、序盤でしっかり描いたホームレスのやむなき事情を中盤でもなぞるおかげで物語が本筋から脱線することはありません。
本に囲まれ、本のおかげで現在のあるスチュアートがこの籠城に共感し、主導的になっていくところ、公共施設としてのあるべき姿をさりげなくアピールしてからの思いがけない味方の登場など、比較的抑制的なこの映画の中にあって胸のすく展開はこの映画のキモなのですが、更に、どこの公共施設でもよいのではなく、図書館でこの占拠が行われていることの意義をしっかり描写する場面では、スクリーンを前に心の中で大いに拍手を送りたくなるのでした。


籠城が続き、閉塞状態が漂いはじめてから終盤に向けて物語をどう収めるか、というところにきての展開は予想の斜め上を行くものだったりするのですが、過度にエンタメ方向にブレることなく、この映画らしい落としどころに落ち着いたと思います。
アメリカの都市部でのホームレスの問題は人種差別と並んでアメリカの最も基本的な病根といってよいと思うのですが、あたりまえ過ぎてその存在が人々の関心から離れてしまっているのかもしれない、と思うときに、トランプ時代となってさまざまな社会問題が再び脚光を浴びるタイミングでの本作の登場は、時流に上手く乗ったといえるのではないかと思います。

適度なユーモアとコメディ要素、しっかり伝えるべきメッセージはしっかり織り込んだ絶妙なサジ加減が、この映画を声高に叫ぶアジテーションとしてではなく、ヒューマンドラマとして心にじわりと響く良作としているのだと思いました。

『パブリック 図書館の奇跡』
2020/9/4(金)~9/10(木)
①9:50~11:55
②15:35~17:40
2020/9/11(金)~9/17(木)
①10:00~12:05
②14:50~16:55
続映決定!
2020/9/18(金)~9/24(木)
時間未定
こちらからお確かめください。

公式HP



Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 11:01

【重要なおしらせ】2019/10/12(土)休館のお知らせ

現在接近中の台風19号の影響を考え、

2019/10/12(土)は、朝から夜まで全回休映となります。
併せましてサールナートホールも休館となります。


お越しくださっても、終日休館となります。館内に入ることはできません。
大変申し訳ありませんが、何卒宜しくお願い申し上げます。


尚、2019/10/13(日)以降は、今のところ開館予定となっております。

停電等により、営業ができない場合は、twitterやブログ等でお知らせいたしますので、ご確認の上ご来場ください。



静岡シネ・ギャラリー

Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 12:54

2019年、ゴールデンウィーク中の鑑賞料金などについて

いつも静岡シネ・ギャラリーをご利用くださいまして、誠にありがとうございます。

2019年のゴールデンウィーク中の営業についてお知らせいたします。




2019/4/27(土)~5/6(月)まで全て祝日となります。

(祝日法では、祝日と祝日に挟まれた平日は休日にすることが規定されており、5月1日が祝日となった場合、4月30日と5月2日は休日となり、2019年のゴールデンウイークは10連休となる)


よって、会員様の鑑賞料金は、1,400円となります
(シニア会員・U-25会員はいつでも1,100円)


(※緑色のご招待券をお持ちの方は、券面通り土日祝日は使用不可となります。なのでGW中はご利用いただけません。ご注意ください。会員様の会員カード裏面の無料鑑賞はご利用いただけます。是非ご活用ください)



ただし、毎月1日は映画の日ですので、
5/1はどなたでも1,100円
でご鑑賞できます。


ゴールデンウィーク中は9:40からオープンし、受付開始いたします。(混み合う場合は早めにオープンいたします)


初めて当館をご利用になられる方は、
こちらにて詳細をご確認ください。

ゴールデンウィーク中に上映する映画については、
こちらにてご確認ください。


静岡シネ・ギャラリー TEL 054-250-0283




それでは今後ともサールナートホール/静岡シネ・ギャラリーを何卒宜しくお願い申し上げます。




(↑『バイス』ゴールデンウィーク中も上映!)

Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 10:51

12/10(木)第八回平和祈年祭開催!

どうも、シネ・ギャラリーの”福”支配人です。

今日は12/10(木)に開催される
「第八回平和祈年祭」のお知らせです。
 表裏 ※クリックで拡大

今年は第一部仏教学者の佐々木閑さんによる
「仏教が説く安らぎの世界」という
演題で講演をしていただきます。
どなた様も参加無料(※要事前申込み)です!
佐々木閑氏

そして、第二部には
ドキュメンタリー映画
監督・光石富士朗さんの舞台挨拶を行います。
(こちらは有料でチケット販売中です)
本作は12/26()~本公開いたしますが、
是非、12/10(木)先行上映にお越しください。
光石富士朗監督

第一部では、仏教的な観点からの「平和」
第二部では、非暴力の観点からの「平和」を、
皆さんと一緒に考えられる機会になればと思います。
多くの方のご参加をお待ちしております。

12/10(木)第八回平和祈年祭ウェブサイト

※この催事は、宝泰寺主催で行われていますが、
企画協力というかたちで、当館サールナートホールが参加しています。

『ダライ・ラマ14世』映画チラシ 本編シーンの数々
   
  

















Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 13:49

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サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー
サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー
静岡市葵区御幸町のサールナートホールです。定期的に演奏会、講座などのイベントを開催しています。3階は、映画館『静岡シネ・ギャラリー』。ご来館を心よりお待ちしております。

お問い合わせ先

(劇場直通)

054-250-0283

〒420-0857
静岡県静岡市葵区御幸町11-14

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