2021年08月07日
| 映画上映情報| ラウペ
19世紀後半のニューイングランド。絶海の孤島にある灯台に二人の灯台守が赴任してくる。二人の任期は4週間。年長で経験豊富な男(ウィレム・デフォー)は元船乗り、新任で若い男(ロバート・パティンソン)は元木こり。到着するなり過酷な仕事に加え年長の男は若い男に高圧的で、二人の間には険悪な空気が流れる・・・
冒頭の二人が灯台に到着する場面からして不穏な空気に満ち、狂暴で重厚なサウンド、深い霧から浮かび上がる灯台、重苦しい音楽・・・怖い映画のオーラが全開。
アスペクト比はスタンダードサイズより更に横幅の狭い1:1.19という、殆ど正方形といってよい画角。
むさくるしい男二人に灯台が画面を目いっぱい塞ぎ、これまたビジュアル的にこれ以上ないほどの息苦しさ。
二人の男の間にある不審や諍いの芽のほかに、二人には最初からそこはかとなく漂う狂気が窺われる導入部からして、相当の緊張感を持って画面を凝視することになります。
二人のうち、どちらがまともで、どちらが狂気に侵されているのか?ひょっとして両方ともか。
幻覚とも妄想ともつかない妖しげな描写が時折挿入されて、更に雰囲気を異様なものとしていきます。
不穏な空気の醸成とともに、観ている方も平常な感覚が次第に失われ、この映画の世界に取り込まれていくのです。
そこから先は何も知らない方がよいので、あとは本編を観てのお楽しみ。
ロバート・エガース監督の前作『ウィッチ』は17世紀のアメリカ北東部で、敬虔な清教徒の一家の赤ん坊が人さらいに遭ったことで降りかかる疑心暗鬼と宗教という人の心の拠り所に起因する悲劇がテーマとなっています。
本作でも絶海の孤島にある灯台という閉鎖空間に閉じ込められた男二人が、次第に平常心を失っていくことで起きる悲劇が、さまざまな神話的イコンや人を幻惑するシンボルとしての灯台のメタファーといった要素が大きなうねりのように積み重なってクライマックスに至る、ある種の酩酊状態のうちに狂気が暴走する様子が描かれます。
人の深層心理が露わになることで理性を失い、人の体をなさなくなる様子を描いている、という点で、両作には通底するテーマが本質的に同じであることが窺われるのでした。
微に入り細に入り、さまざまな技巧やメタファーをちりばめられて作られた本作は、観る者の脳裏に焼き付き、また改めて鑑賞したくなる、スルメ映画ともいえるでしょう。
2度目、3度目と鑑賞するうちに新たな発見をすることで、ますます作品にのめり込む、ある種の中毒性があると感じました。
監督の次回作”The Northman”はバイキングの復讐劇らしいですが、やはり注目せずにはいられません。
『ライトハウス』
2021/8/6(金)~8/19(木)迄上映予定
2021/8/6(金)~8/12(木)
①15:25~17:20
②19:25~21:20
※8/12のみ、②の回休映
2021/8/13(金)~8/19(木)
時間未定
決まり次第掲載
静岡シネ・ギャラリー公式HP
Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at
15:38