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静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

ラウペ

好評上映中!『人生タクシー』

当局によって映画製作を禁じられたイランのジャファル・パナヒ監督がタクシー運転手となって様々な乗客との会話を記録した「映画」
第65回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。

最初はドキュメンタリーかと思いましたが、たぶん色々な事情があって作中では明示されていないものの、これはジャンルとしては明らかにドキュメンタリー的ドラマのひとつでしょう。
イスラム革命以前のイランは西側寄りで、中東の産油国の中では最も豊かな国の一つでしたが、革命後はその内側の様子についてはなにやら窮屈そうで「よくわからない(=よく知らない)国」の一つとなってしまった感がありました。
この作品では市井の様々な人々が乗客として乗り込むことで、今のイラン市民の暮しというものをリアルなイメージとして体験できます。

人生タクシー




まず驚いたのがテヘランの街中の洗練された雰囲気。建物などのインフラは近代的で、自動車もみな新しく、日本の都会の風景とまったく変わりません。アメリカの経済制裁を受けつつもやはりイランは今でも豊かな国であるらしいことがわかります。
それとタクシーは相乗りが基本であるということ。追加料金を払うと貸し切りにすることができるようです。
相乗りとなることで居合わせた見知らぬ乗客同士が会話することになり、思わぬ反応を窺うことができます。
こうした会話を聞いていて、意外だったのが登場する女性が非常に積極的に自分の意見を述べ、男性に対しても物怖じすることなくきっぱりと意見を言うところ。イスラム法に厳格なはずのイランですが、その中でもイランの女性は実に聡明で、一人の個人として自らの意見を主張できるのは驚きでした。日本の女性でもここまで積極的には自己主張できないのではないでしょうか。

偶然?乗り合わせた乗客も様々な背景を持つ人達ばかりで、「フリーランス」で謎の商売としている男、金魚をある時間までに届けなければいけないお婆さんの2人組、西側のDVDをカバンに詰めてレンタルして回る男、問題を抱えた旧友、バラの花束を抱えた知人の女性弁護士、学校から映画製作の課題を出されているおませな姪っ子・・・などなど、それぞれの会話の中から日本とたいして変わらない人付き合いの問題や倫理観、それにイランが抱える問題の一部を垣間見ることができます。

カメラは終始ダッシュボードに取付けられた状態と一部手持ちのカメラからの映像で、車内から一歩も出ることなく、映像を紡いでいきますが、最後のオチもすっきり決まって、なんともほっこりした余韻を残します。
パナヒ監督は映画製作を禁じられているとはいえ、逆にその渇望感が創作意欲の原動力となっているのかなと思いました。やっぱりその根底にあるのは「映画愛」です。


☆特別企画☆
本作から感じたインスピレーションを基に、日本の映画監督たちが
「もしもじぶんが映画監督禁止令を受けながらも、映画をつくるとしたら」
をテーマに短編映画を制作。
本編上映前に特別映像として各回上映します。

【4/29~5/5】森達也監督(『FAKE』)作品『映画を撮れない映画監督』(4分1秒)を上映
【5/6~5/12】松江哲明監督(『フラッシュバックメモリーズ3D』)作品『ちいさな宝もの』(3分9秒)を上映


『人生タクシー』
4/29(土)~5/12(金)
連日①11:35 ②17:40



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Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 15:57

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(劇場直通)

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