eしずおかイベント情報

静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

ラウペ

山田孝之全面プロデュース!『デイアンドナイト』

疎遠だった父が突然亡くなり、実家に帰ってきた明石(阿部進之介)は、父が自動車会社のリコール隠しを告発して裁判となっていた最中の自殺であると知る。父に世話になったという北村(安藤政信)の児童養護施設で働くようになるが、北村には裏の稼業があった・・・

大企業の不正隠しや、裏稼業の目的、施設の少女との邂逅など、さまざまな要素が絡むなかで物語が進行していきますが、次第にさまざまな人の想いが浮かび上がってくる展開は非常に濃密で、本編134分とやや長めの映画ですが、長さはまったく気になりません。
映像も昼と夜、薄暮のときでそれぞれ表現を使い分け、特に夜の場面での鮮やかな色彩感は大変美しく、本作の題名とも重なり、作品を大変魅力的なものとしています。
なかには「ボーダーライン」とそっくりな(音楽もそこだけヨハン・ヨハンソンっぽくなる)、オマージュと思われる場面がさりげなく挿入されたりするところもあり、ニヤっとさせられます。
デイアンドナイト
(C) 2019「デイアンドナイト」製作委員会

さまざまな要素のある映画ですが、通底するテーマは、正義とは何か、善悪を分ける境界はどこにあるのか?ということだと思います。
明石の父は大企業の不正を質す志半ばで斃れ、家族は塗炭の苦しみの中にあり、北村は表の慈善事業を支えるために裏稼業を営む、明石は北村を手伝いながら父の無念を晴らすべく真相を究明しようとする・・・
そこに神秘的な施設の少女、奈々(清原果耶)が物語に絡み、ちょっとした端役にもそれぞれの事情や背景があるところなど、人の行いにはそれぞれ理由(目的)があり、誰かのために善かれと思って為すことにも、それに伴う結果が人を不幸にすることもある、という、一面では測りきれない、次第にぼやけてくる善悪や正義の境界に登場人物たちが翻弄されていく様子は非常に多くのことを考えさせられました。
明石は父が北村を手伝っていたことを知り、たびたび父の幻を見ることになりますが、次第に父と同じ轍に嵌っていく様子は作品のテーマに沿うとともに、無くしていた親子関係の修復過程でもあるように思えました。

そうしたことが幾重にも重なって、さまざまな物語が終盤で結びに向かう展開は最後まで目が離せません。
観終わってからも深い余韻を残し、人のために尽くすことや善悪の境界について、思いを巡らしながら帰途につきました。
後からきっと誰かと話したくなる、そんな映画だと思います。


『デイアンドナイト』
1/26(土)~2/15(金)連日①12:55 ②19:05
作品 https://day-and-night-movie.com/



同じカテゴリー(ラウペ)の記事画像
この運命から、目を逸らさない――。 『ドライブ・マイ・カー』
自分で選ぶ未来のために 『17歳の瞳に映る世界』
それでも、生きていく。 『トゥルーノース』
謎が、満ちてゆく 『ライトハウス』
香港に自由を 『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』
その嘘は本当ですか? 『猿楽町で会いましょう』
同じカテゴリー(ラウペ)の記事
 この運命から、目を逸らさない――。 『ドライブ・マイ・カー』 (2021-08-23 15:44)
 自分で選ぶ未来のために 『17歳の瞳に映る世界』 (2021-08-15 12:28)
 それでも、生きていく。 『トゥルーノース』 (2021-08-13 10:36)
 謎が、満ちてゆく 『ライトハウス』 (2021-08-07 15:38)
 香港に自由を 『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』 (2021-07-26 12:41)
 その嘘は本当ですか? 『猿楽町で会いましょう』 (2021-07-12 11:44)

Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 11:27

コンテンツ

アクセスカウンタ

基本情報

プロフィール
サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー
サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー
静岡市葵区御幸町のサールナートホールです。定期的に演奏会、講座などのイベントを開催しています。3階は、映画館『静岡シネ・ギャラリー』。ご来館を心よりお待ちしております。

お問い合わせ先

(劇場直通)

054-250-0283

〒420-0857
静岡県静岡市葵区御幸町11-14

ここでも情報発信中!

記事

過去記事
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 39人
QRコード
QRCODE
削除
山田孝之全面プロデュース!『デイアンドナイト』