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静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

ラウペ

究極の美と権力に秘められた名画ミステリー『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』

ヒトラーやゲーリング、ナチスに収奪された芸術作品は60万点に上り、今でも10万点が発見された以外は行方不明だとのこと。ナチスと芸術作品に絡むさまざまな問題を採り上げ、いまもなお続くその影響について描き出していきます。

古くは『大列車作戦』、近年でも『黄金のアデーレ』、『ミケランジェロ・プロジェクト』などといった映画でナチスが芸術作品を収奪してきたことをテーマとした映画は多く、ドキュメンタリーのテーマとしても大変興味深い内容です。
単にナチスと芸術絡みといっても、具体的なテーマはさまざまで、戦利品として、またユダヤ人からの没収財産の一部として芸術作品が集められ、国家やヒトラー、ゲーリングの個人コレクションとなっていった経緯や、アーリア人の文化的称揚の手段として『大ドイツ芸術展』とその対極にある『退廃芸術展』の開催、収奪された芸術作品が所有者死亡その他の戦時の混乱などで遺族への返還がままならないという事実、「退廃芸術」がアメリカに流出したことで、戦後現代芸術の中心がヨーロッパからアメリカに移動したこと等々、「全国指導者ローゼンベルク特捜隊」だの「モニュメンツ・メン」だのといったこの方面にアンテナの高い向きにはピンとくるキーワードとともに実に多岐に亘って紹介されていきます。

ヒトラーvsピカソ

紹介されているエピソードや事実はそれぞれに興味深く、掘り下げようと思えばいくらでも深掘りできるものばかりなのですが、この作品の場合、できるだけ多くの事例を紹介することに力点が置かれているので、個々のテーマの掘り下げはそれほどでもないのですが、そのことがかえって問題の多様性と深刻さを物語っているともいえるでしょう。
映画を観たあとに気になるところを更に掘り下げるための良いガイドとなるのではないかと思います。

また、タイトルにもなっているピカソのエピソードはこの映画の最後になってはじめて出てくるのですが、占領下のパリでピカソのアトリエを訪れたゲシュタポの将校の問い掛けに向かってピカソの返す返答は、現代の芸術が政治の横暴に対してどのように立ち向かうべきなのか、あるいは何ができるのか、という非常に大きなテーマへの見事な回答となっており、作品のテーマに相応しいインパクトを与えるものとなっています。

ナチスの遺した爪痕は実にさまざまな分野に亘って影響を及ぼしており、芸術もその一つであることに違いはないのですが、多様な文化や考え方の表現手段であるばかりでなく、世の中の不正義に対する非常に有力な武器となりうるのだと、本作を観てその思いを深めることができるのです。

『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
6/21(土)迄の上映 連日①12:25
http://hitlervspicasso-movie.com/


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Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 12:01

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