映画上映情報 なべ

私は今回『Girl　ガール』をご紹介したいと思います。ポスターや予告編でご覧になった方も多いかと思いますが、若いバレリーナの映画だ、と一言で表せない作品です。



15歳の美しい少女ララはバレリーナを目指して日々厳しい練習をしている。父と弟と愛情あふれる家庭で夢に向かう彼女には大きな悩みがあった。彼女は男性の体に生まれついたトランスジェンダーで、心と体の性別が一致していないがために苦しんでいる。難関のバレエ学校に入学が認められても、厳しいレッスンと周りの好奇な目に、どんどん追い詰められて行く。夢の舞台、淡い初恋、家族の応援、ただでさえ敏感な思春期にあまりにも多くのものを背負い込んでしまうララはどうなってしまうのか。



スクリーンの中のララは本当に美しく儚そうに見えて芯がしっかりしている真面目な少女、レッスンでも手を抜かず、補習の個人レッスンにも取り組んでいる。先生にも他の生徒にもトランスジェンダーであることは知られているだろうに、体の男性の特徴を必死に隠し、呼吸が上がり、意識が遠のきそうなギリギリのところで踊り続ける。見ている私も息が苦しくなり、ララの休憩時間には胸が締め付けられる。
学校を離れるとララはある人と出会い恋心を抱くが、初恋だし相手に自分のことを打ち明けていないために苦しむ。不器用な、本当に不器用な感情表現で苦しい。
今までLGBTの人物の映画は見てきたがこんな生々しい日々の苦労を見せ付けられたのは初めてだった。
ララにとって希望の光はホルモン療法を経て、もう少し大人になったら手術をするという医師たちの言葉。それまでは私ががんばればいいのだと思いつめるララ。



昨年度のゴールデングローブ賞にノミネートされたのをはじめ、カンヌ国際映画祭でカメラドールなど三冠を獲得し話題の本作。ベルギーの新鋭監督ルーカス・ドンのデビュー作。彼が実際にララと同じような少女の新聞記事を目にしたことがきっかけで本作が作られ、主演俳優のオーディションは難航したらしいです。ララ役のビクトール・ポルスターはアントワープ・ロイヤルバレエスクールのトップ男性ダンサー。彼は中性的な魅力のダンサーですが、俳優業と女性のダンスを踊るということに関しては戸惑いがあったようです。しかし思春期のもどかしさ、イラつき、苦悩などがひしひしと伝わり、バレエのシーンでも華麗な美しい踊りを見せてくれました。
春に上映された『ある少年の告白』と親の行動は対照的なものですが、わが子に「幸せになってほしい」と心から願う気持ちは同じで、私も心から共感できました。どうぞララの未来を見に来てください。


公式ＨＰ→http://girl-movie.com/