eしずおかイベント情報

静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

映画上映情報 ラウペ

鬼才・ジョーダン・ピール監督のサプライズ・スリラー『アス』

『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督・脚本・製作の第2作。
前作で黒人差別というテーマを靴下が裏返ったような逆位相で描いてみせたキレの良さが本作でまた発揮されるのか興味津々といったところ。
監督も相当のプレッシャーで臨んできたであろうことは想像に難くありません。

主人公のアデレード(ルピタ・ニョンゴ)は子供の頃サンタクルーズの海岸でトラウマとなる出来事があって以来、夫と子供とともに久しぶりに同地を訪れることに。不吉な予感を感じつつ夜を向かえると、外に自分たちと同じ外見の「彼ら」が現れる・・・

基本的に理不尽系のホラーには違いないのですが、その展開について少しでも具体的に触れることは映画を楽しむ上で障害となりかねず、何も予備知識なしで観るべきだと思います。
なので、この作品の本質的なテーマやメタファーについてここで触れることは控えようと思うのですが、となると、作品についてネタバレ無しで何か書くことは非常に限られたものになってしまう、というジレンマがあります。
鬼才・ジョーダン・ピール監督のサプライズ・スリラー『アス』

今作においても非常にはっきりとしたテーマや問題提起がなされていることは間違いなく、それは物語の中盤あたりで既に明確になってくるのですが、本作の特筆すべきところは、物語の比較的早い段階でホラー的な危機が全開となって訪れ、物語が核心に迫っていくのとホラーとしての見せ場が同時進行することで、謎解きとイベントの両方を楽しめるところ。
テーマの核心はちょっと頭を使うところもあったりしますが、今の時代を象徴するメタファーとしての押し出しの強さは明確で、単なる娯楽作品の枠内に収まらない奥深さは『ゲット・アウト』譲りといえるでしょう。

また、コメディ出身の監督ということもあり、シビアな場面にまで入り込む笑いの要素のサジ加減は大変秀逸で、それも過度に陥ることなく、唐突に襲ってくるあたりが心憎いところ。
ホラー的な要素も単に見た目や音響で脅かすといった手法よりも、心理的にじわじわくる怖さはどこかキューブリックの『シャイニング』を思わせるところがあり、ツボを心得ていると感じます。
ホラーとして先の読めない展開は外形的には○○的な、○○に似ている、といったカテゴライズをすることは可能なのですが、「彼ら」の正体やメタファーの本質から考えれば、出来上がった作品はまったくのオリジナルな世界といってよく、既存のスタイルを借りながら独自の新しい世界を構築していくところがいかにもコメディアン出身らしい創造の仕方なのだなと感じました。
アス2
また、どうしても触れておきたいのはルピタ・ニョンゴの「顔芸」をはじめとする演技の数々。
『ブラック・パンサー』での精悍で強靭なキャラクターらしい演技から更に一段ステップアップした感のある圧倒的な存在感が本作の魅力を更に押し上げているのは間違いありません。
彼女の見事さをぜひ堪能していただきたいと思います。

まあとにかく、何も予備知識なく観て頂いてから、あれこれ考えを巡らすのがこの作品を楽しむのに相応しいアプローチかと思います。

最後に一言だけ申し添えるならば、全てが明らかになったときに、浜辺を歩く家族を真上から捉えた序盤のショットがこの作品のシンボリックな場面としてどれだけ多くの意味を持つかという点に思い至り、この監督の非凡な才能に改めて舌を巻くのでした。

9月14日から当劇場で公開の『ゲット・アウト』〈9/14(土)~9/27(金)連日①17:05〉と合わせ、必見の作品です。

『アス』
https://usmovie.jp/
9/6(金)~9/13(金)連日①10:15 ②14:45 ③19:15
9/14(土)~9/27(金)連日①14:55 ②19:05
9/28(土)~10/4(金)連日①17:10



(C)Universal Pictures


同じカテゴリー(映画上映情報)の記事画像
この運命から、目を逸らさない――。 『ドライブ・マイ・カー』
自分で選ぶ未来のために 『17歳の瞳に映る世界』
それでも、生きていく。 『トゥルーノース』
謎が、満ちてゆく 『ライトハウス』
香港に自由を 『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』
その嘘は本当ですか? 『猿楽町で会いましょう』
同じカテゴリー(映画上映情報)の記事
 この運命から、目を逸らさない――。 『ドライブ・マイ・カー』 (2021-08-23 15:44)
 緊急事態宣言下での営業について (2021-08-19 10:47)
 自分で選ぶ未来のために 『17歳の瞳に映る世界』 (2021-08-15 12:28)
 それでも、生きていく。 『トゥルーノース』 (2021-08-13 10:36)
 謎が、満ちてゆく 『ライトハウス』 (2021-08-07 15:38)
 【重要】2021/8/14(日)『映画:フィッシュマンズ』18:30の回、上映時間変更のお知らせ (2021-08-07 15:24)

Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 11:48

コンテンツ

アクセスカウンタ

基本情報

プロフィール
サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー
サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー
静岡市葵区御幸町のサールナートホールです。定期的に演奏会、講座などのイベントを開催しています。3階は、映画館『静岡シネ・ギャラリー』。ご来館を心よりお待ちしております。

お問い合わせ先

(劇場直通)

054-250-0283

〒420-0857
静岡県静岡市葵区御幸町11-14

ここでも情報発信中!

記事

過去記事
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 39人
QRコード
QRCODE
削除
鬼才・ジョーダン・ピール監督のサプライズ・スリラー『アス』