ラウペ

19世紀末のロシア。貴族の娘のサーシャは北極に航海に出たまま行方不明となった祖父の生存を信じ、自ら捜索の旅に出る・・・

ともかく、何をおいても絵が大変美しい作品。
輪郭線を排し、単純化された色の塗り分けのみで表現する手法は、圧倒的な描き込みとリアリティの追及に主眼の置かれた日本アニメの主流とは対極にあり、技法的にはシンプルな部類なのだと思いますが、特筆すべきは場面ごとの色彩設計の緻密さで、霧の中に溶け込むぼんやりした景色や、夕やみの場面、氷山と一面の雪原の中の微妙な色合い等々、うっとりするほど美しい場面の連続。
それでもサーシャはじめ登場人物の目力を感じる表情などは、その場面を適切に、雄弁に表現していて、大変丁寧に作られた作品であることが伝わります。



物語は一言で言うなら『ラピュタ』っぽくもあり『アド・アストラ』的でもある感じ。少女が大人に助けられながら成長していく王道ストーリーですが、美しい絵面に見とれていると、極地で直面する過酷な状況に思わず前のめりになるほど引き込まれます。
氷に取り囲まれて船が脱出不能になったり、雪原でのサバイバルといった具体的な描写は「エンデュアランス号」の遭難事件の状況を彷彿とさせ、その行程の過酷さが一層リアルなイメージとして体感されました。

本編81分というコンパクトさが、物語の凝縮度を更に高めていると感じますが、観終わってみるとあっという間で、もっと長く観ていたい、と感じる作品でした。
上映は字幕版のみですが、大人も子供も楽しめる良質なアドベンチャー、ご家族でぜひご覧いただければと思います。

『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』
11/23（土）～12/6（金）連日①11：50
https://longwaynorth.net/


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