世界的ミステリー作家の誕生パーティの翌朝、作家が死んでいるのが見つかった。集まった家族全員が怪しい・・・
最近あまり見かけなくなったアガサ・クリスティー風の混じりっ気無しの本格ミステリー。
豪邸で夜間の犯行、家族全員に何かしらの動機があり、犯行現場への出入りは物音がして難しい・・・このあたりはアガサ・クリスティーの本丸というべきシチュエーションで、この作品が最大限のオマージュとして捧げて作られていることは間違いありません。
登場する探偵の名前もブノワ・ブラン(Benoit Blanc)とフランスふうの名前で、これもエルキュール・ポワロへのオマージュでしょう。
130分という限られた時間の中で懲りに凝ったミステリー要素を詰め込んで、それでも急いでいる感じのしない脚本は見事の一言に尽きます。
冒頭から事件の関係者の証言を順に聞きつつ登場人物を過不足なく紹介していくプロセスは、実に手際良く、事件の入り口にすんなり入っていくことができます。
外形的に知られた事態がざっと分かってから登場人物のウソが次第に明らかになっていく様子は安定のミステリー的展開なのですが・・・そこから先は観てのお楽しみ。
およそミステリーのネタは過去の偉人たちによって掘り尽くされた感があるのですが、その枯渇したかに見える金鉱に新たな鉱脈を掘り当てるような意外性がこの作品の大きな収穫といえます。
アカデミー賞の脚本賞にノミネートされているのも頷けます。

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怪しい家族も皆が個性的で、クリス・エヴァンスをはじめ、アナ・デ・アルマス、マイケル・シャノン、ドン・ジョンソン、ト二・コレット、そしてクリストファー・プラマーといった豪華なキャストの競演とともにお楽しみなポイント多数。
小さな伏線が後から大きな意味を持つところ、謎が謎を呼ぶ展開はこのあとどうなっちゃうの?という意外性とサスペンス的様相も帯びてきてスクリーンから目が離せません。
ブノワ・ブラン役のダニエル・クレイグは007の次回作を最後にジェームズ・ボンド役から引退すると伝えられていますが、本作では米国英語のアクセントで静的なキャラクターを好演。
ライアン・ジョンソンは既に続編の企画に着手している、とのことなので、ブノワ・ブランは彼の新たな定番となるのは間違いないでしょう。
次回作も大いに期待したいと思います。
『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』
https://longride.jp/knivesout-movie/
1/31(金)~2/14(金)連日①10:00 ②14:45 ③19:20
2/15(土)~2/28(金)連日①10:05 ②14:55 ③19:25
Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at
18:25