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静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

ラウペ

ケネス・ブラナー監督・主演作『シェイクスピアの庭』

1613年、「ヘンリー8世」の上演中にグローブ座が炎上崩落、シェイクスピアは故郷のストラトフォード・アポン・エイヴォンに戻った。20年ぶりに帰宅したシェイクスピアに妻や娘たちは冷ややかな態度だったが、シェイクスピアは夭折した一人息子のハムネットのために庭を作ることを思い立つ。

『マイティ・ソー』の監督から『オリエント急行殺人事件』のエルキュール・ポワロまで多彩な活躍を見せるケネス・ブラナーがその本丸であるシェイクスピアの晩年に挑む渾身の一作。
本作はシェイクスピアのことはあまり分からなくても、普遍的な家族の物語として楽しむことができます。

功成り名を遂げて故郷に凱旋した偉業の人でも、家族にとっては疎遠な存在であり、また留守中に起きた家族にとっての重大事も本当のことを把握しているとは言い難い。
封建的家父長制の真っただ中にある16世紀の英国で、父親が一人息子にかける期待の大きさは絶大で、それも世間に無二の存在である偉人の息子ともなれば、その大きさは無限といってよいプレッシャーとなったであろうことは想像に難くありません。
遠くロンドンで活躍する父にとって息子からの便りは実像とは乖離した大きな期待となって美しくイメージされ、その死は晩年のシェイクスピアの心に大きな空洞を作っており、一方で、女所帯となった故郷の家族にとっては、父の息子への期待の多くが空想の産物であったことからそのあいだに大きな溝が出来ていたのでした。

シェイクスピアの庭

物語は次第に明らかになる息子の実像と、娘との立場や見解の相違、顧みることのなかった実家を守る妻(ジュディ・デンチ)のことを丁寧に描くことで、晩年のシェイクスピアの心のスキマの修復を描いていきます。
セリフは演劇的で少々勿体付けたような言い回しがいかにもシェイクスピア的という感じ。しかし、よく吟味されたセリフの数々が家族それぞれの微妙な心の機微を表現していて大変味わい深いものがあります。

物語の途中でソネットの献呈者と推測されるイアン・マッケランのサウサンプトン伯がシェイクスピアの元を訪ねてきます。
いかにも過去に様々なことがあったであろうと推察される意味ありげな会話もまた大きな魅力。

次女ジュディスの婚約者を巡る騒動と、ハムネットの等身大のイメージの再構築を経て、シェイクスピア自身が問題の本質に気付き、自力で解決の道を切り拓く展開は、これまでの人生で積み重ねてきた人間観察と作家としての冷静な判断力に裏打ちされたものであろうことを窺わせ、なんとなくポワロ的アプローチを思わせることが興味深いところですが、その帰結は家族の信頼と愛情の回復の物語として、深く大きな感動を生んでいるのでした。

『シェイクスピアの庭』
5/29(金)~6/4(木)連日①12:35
http://hark3.com/allistrue/

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Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 12:39

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