eしずおかイベント情報

静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

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モダニズムの源流、バウハウスへようこそ 『バウハウス100年映画祭 プログラムA・B』

バウハウスは1919年から1933年まで戦間期のドイツで開校された建築・インダストリアルデザイン、アートの総合的な美術学校のこと。
建築家のヴァルター・グロピウスによって始められたバウハウスは、「すべての造形活動の最終目標は建築である」との理念のもと、建築はもとより、生活に関連する芸術・デザインを多方面から扱い、現代のインダストリアルデザイン、アート界に多大な影響をもたらしました。
2019年に開校から100周年を迎え、バウハウスに関連するドキュメンタリー映画6本を4プログラムで上映する特集の第1週目。

モダニズムの源流、バウハウスへようこそ 『バウハウス100年映画祭 プログラムA・B』

プログラムA
『バウハウス 原形と神話』
バウハウスの卒業生のインタビューやグロピウスらの証言などによって、バウハウスの実像に迫るドキュメンタリー。
当事者たちの語るバウハウスの実際の様子は書籍や展覧会などで知る外形的な知識と異なり、授業や学生の生活の様子、当時の世相などとの関わりが伝わり、大変興味深いものです。
その設立当初の様子や、ヴァイマール-デッサウ-ベルリンと移転しつつ変容を遂げるバウハウスの内情は、この画期的な美術学校が時代の流れに翻弄され、14年という短い期間で閉校を余儀なくされた経緯を皮膚感覚で知る貴重な機会を提供してくれます。
ナチスのあからさまな妨害を経て、形式上は自主閉校を決めた経緯は当事者として圧力に屈したと素直に認めたくない微妙な心理の顕れではないかと感じます。
閉校後にナチスに協力した者がいたこと、アメリカをはじめ関係者が活動の場を海外に移してその精神を伝えてきたことを想うと、ナチスが政権を握った1933年という年にドイツでの活動を終えたことはむしろ僥倖というべきだったのではないか、という気がしてくるのでした。

モダニズムの源流、バウハウスへようこそ 『バウハウス100年映画祭 プログラムA・B』

プログラムB
『バウハウス・スピリット』
バウハウスの理念が現代においても受け継がれている様子を紹介するドキュメンタリー。
スウェーデンの教室のない学校、狭小住宅でのユニット化された家具の活用、コロンビアのスラムにおける住環境の改善プログラム、バウハウスの理念を現代舞踊で表現するアーティストなど、単なる建築・家具の改良に留まらず、住環境全般の改善・発展に応用されていく様子を描いていきます。
ユニット化や実用的デザインの追及を突き詰め現代デザインの原点を築いたバウハウスですが、それはそれを使う人々にとってどう利用されているか、生活の中での立ち位置はどうあるべきか、という視点への発展はある意味では必然な流れであると感じるのですが、特にコロンビアのスラムにおける住環境の改善は、丘陵地に無秩序に建てられたスラムにエスカレーターやロープウェイを設置することで、地域全体の環境改善に繋げていく試みはその理念の拡大・応用の成功例として非常に明確にその向かうべき姿を示していると感じました。

モダニズムの源流、バウハウスへようこそ 『バウハウス100年映画祭 プログラムA・B』

『バウハウスの女性たち』
世界でも例を見ない先進的芸術学校であったバウハウスでは学生の半数から1/3が女性だったが、その活躍の道は現代のレベルからは遠く及ばないほど限られたものであったことを描くドキュメンタリー。
画期的な理念のもとにバウハウスを創設したグロピウスでしたが、その女性に対する考え方は驚くほど守旧的、いや、もはやミソジニーというべきレベルで、女子学生の増加は学校の価値に影響するとまで考えていたことは驚愕すべき事実。
本作に登場する6人の女子学生の活動とその後については、第二次大戦前後という比較的遠くない過去でさえも、女性の実力が認められ、活躍の場が与えられることがどれほど難しいか、具体的事例として紹介されていきます。
静岡県立美術館での「きたれ、バウハウス!」展でもアルマ・ジートホフ=ブッシャーの子供部屋用家具の復元模型が展示されていましたが、現代においてもそのまま通用している実績を残していながら、表舞台に登場してこない彼女たちの運命は、在学時から既に決定づけられていたことは記憶に留めておく必要があるでしょう。
あるジャンルで神格化と言ってもよい評価を獲得していても、別の面ではその限界を露呈する、歴史的な側面を考慮するとしても、物事は他方面からの評価によって絶対的なものではありえない、という事実を知るうえでも、価値のある一作だと思います。


現代においても多大な影響を残しているバウハウスをさまざまなテーマから描くバウハウス100年映画祭。
前半のプログラムA・B、後半のプログラムC・Dはそれぞれ1週間限定での上映です。

バウハウス映画祭
プログラムA
バウハウス 原形と神話
2020/6/19(金)~6/25(木)
1週間限定上映
①11:25~13:10

バウハウス映画祭
プログラムB
バウハウス・スピリット
バウハウスの女性たち
2本同時上映
2020/6/19(金)~6/25(木)
1週間限定上映
①13:25~15:05

モダニズムの源流、バウハウスへようこそ 『バウハウス100年映画祭 プログラムA・B』

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Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 10:43

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モダニズムの源流、バウハウスへようこそ 『バウハウス100年映画祭 プログラムA・B』