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静岡市葵区御幸町にある、文化施設のサールナートホールです。 三階には、静岡シネ・ギャラリーも併設しています。 いろいろな催し物、映画を上映しています。

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『コリーニ事件』 国家を揺るがした世界的ベストセラー待望の映画化!

ドイツで弁護士になったばかりのカスパー・ライネンは実業家ハンス・マイヤーを殺害したイタリア人容疑者ファブリツィオ・コリーニの国選弁護人を引き受けた。殺害の動機を頑なに語ろうとしないコリーニだったが、調査を続けるうちに過去に纏わる驚くべき事実が解き明かされていく・・・

『コリーニ事件』 国家を揺るがした世界的ベストセラー待望の映画化!

原作は弁護士で作家のフェルディナント・フォン・シーラッハ。
シーラッハの短編「犯罪」「罪悪」は以前に読んでいましたが、自身の豊富な刑事事件と法律の知識に裏打ちされた意外な犯罪の数々、どこか斜に構えたような乾いた観察眼と人生模様に対するシニカルでも温かい眼差しが独特の風合いを感じる簡潔な作風が大変印象深いものがありました。
本作も映画の鑑賞前に我慢しきれなくなって原作を読みましたが、200ページと長編としてはそれほど長くない作品ながら、その観察眼と衝撃的な根幹部分の問題提起にしばらく茫然としてしまいました。
映画は基本的には原作に非常に忠実で、登場人物や細部の設定に若干の変更が加えられていますが、むしろ原作の意図する方向に良い意味での強調が行われていて、映像作品として凝縮度の濃い、明快でメリハリの効いた変更であったと思います。

物語でコリーニがハンス・マイヤーを殺害する動機の元となったのは第二次大戦中にイタリアで行われた親衛隊による残虐行為にあるのですが、本作の焦点はそこから更に進んで戦争犯罪に対する組織と個人の行いの責任の問題、法律の瑕疵といった問題に及んでいきます。
戦後になってもなお続くナチスの残党若しくはそのシンパによる責任逃れの知られざる活動の一端が浮き彫りにされていくのですが、全編を貫いているのは、徹底的な過去の戦争犯罪に対する追及の姿勢であり、現代においてなお過去に行われた隠蔽工作をもあぶりだすことで過去の過ちを質そうとする真摯な試みの発現といえるでしょう。
そこにはいかにもドイツ人的徹底さが根底にあるのだろうとも推察されますが、作者の祖父はナチスの全国青少年指導者バルドゥール・フォン・シーラッハ(ニュルンベルク裁判で禁固20年)であり、過去に対して嫌でも向き合わなければならなかった作者の生い立ちによるところも大きかったのではないかという気がします。

『コリーニ事件』 国家を揺るがした世界的ベストセラー待望の映画化!

物語の後半、明るみに出る新たな真実による問題提起が裁判の行方を不確かなものとしていくことで法廷劇としての醍醐味を味わえるとともに、コリーニが背負わされたものの大きさがひしひしと伝わるクライマックスには大きく感興を揺さぶられるものがありました。

原作の既読・未読に関わらず、法廷ものの傑作のひとつとして長く記憶される作品であることは間違いないと思います。

ちなみに物語中で多重な意味において重要な問題となるのが(本作に限らず欧米の裁判ものでもよく登場する)「故殺」と「謀殺」の違いで、大雑把に言って「故殺」は殺人が故意に行われたことを容疑者が認識しているが従属的であったり計画性と目的意識が希薄なこと、「謀殺」は殺人の明確な目的意識と計画性が認められること、といった違いがあります。欧米の法律では殺人の目的や悪質性について厳格に運用する意味から「故殺」と「謀殺」を厳格に分けて運用する考え方があるようです。
本作においてドイツの法規の主要な瑕疵としてクローズアップされる「ドレーアー法」については、映画の鑑賞後にパンフレットをお読み頂くことで、その問題点とこの作品のもつ重要な意義を知ることができます。

『コリーニ事件』
2020/7/24(金)~8/6(木)まで連日上映
公式HPはこちら

上映時間など、上映情報はこちら




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 【重要】2021/8/14(日)『映画:フィッシュマンズ』18:30の回、上映時間変更のお知らせ (2021-08-07 15:24)

Posted by サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー at 10:57

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