グラフィックアーティストで漫画家のマット・フューリーは2005年、自らの大学生活の体験を元に”Boy's Club”のシリーズを描き始めた。その中のカエルのキャラクター「ペペ」は「feels good man(気持ちいいぜ)」のフレーズとともにネット上で拡散し、ある時点からオルト・ライト=オルタナ右翼(alt-right=Alternative Right)のネットミームとして利用されるようになる。ペペの誕生からマット・フューリーがペペを本来の姿に戻すべく奮闘する様子を記録したドキュメンタリー。
ミーム(meme)とは文化や情報、考え方や思想などを伝達するための手段やアイテムもしくは単位のことで、ネットミームはインターネットを介して伝達されるミームのこと。
その主な伝達手段はSNSやブログ、掲示板などで、そこで模倣され、拡大再生産(=拡散)されることでネット民に共有される一種の共通認識ということになるのだと思います。
アメリカにおけるコミックやアニメなど、ビジュアル系のサブカルチャーを俯瞰できないと”Boy's Club”やペペの人気の秘密というか、その理由にはなかなかピンと来ないところもあるのですが、マットがマイスペースで”Boy's Club”を始めた際に、世間に背を向けるニート(NEET=Not in Education, Employment or Training)がペペに親近感を覚えたとするところはなるほどと納得できるものがあります。
日本にはネットミームに相当するアイテムとしてAA(ASCII art)という偉大なネットカルチャーがあり、2ちゃんねるなどで隆盛を極めたのはご存知のとおり。
“引き籠り”に代表されるニートはアメリカも日本も同様にその表現方法として匿名掲示板でこうした遊びで自己実現を試みていたのだと思いますが、ペペが認知され、オルト・ライトのネットミームとして転用されるようになったのは、ペペが一瞥しただけでそのキャラクター性を認知し記憶されやすい明快さを持っていること、他に似たもののないオリジナリティが際立っていたことなどが悪い方向に作用したのではないか、と思います。