映画上映情報 なべ

ジメジメとした暑さが続きますが皆様お元気でお過ごしでしょうか?シネギャラリーでは相変わらず、あらゆるジャンルの作品を感染対策しながらお届けしています。
今回の作品たちの中で私がとても楽しみにしていたのが本作、『明日の食卓』です。

登場するのは三組の石橋家の親子。大阪で働き者のシングルマザーと暮らす少年、彼は生活のため仕事を掛け持ちし必死で自分を支えてくれる母を心配させまいと小さなことには目を瞑るサッカー少年。
神奈川で両親と弟と暮らす少年、いわゆる育メンではない父親とフリーライターとして第一線に戻ろうとしている母親との生活の中で、両親の仲や弟との待遇のちょっとした不満が募っている。
静岡で瀟洒な一軒家で不自由ない生活をしている少年、会社員の父、専業主婦の母、隣家に住む祖母、身なりもよくお勉強もできそうな少年の表情には少し曇りがあった。
この少年たちの名は皆「ユウ」という。


作品の中でユウ君たちのエピソードが描かれていき、少しずつそれぞれの家庭の抱える問題が浮き彫りになる。それは何も特別なことではなく、自分が子どものとき、または親になってから経験していて不思議はないようなことが多く、そのときの記憶がよみがえると胸がギュッとなる。ボタンの掛け違いか、分かれ道の選び間違えか、ささいなことでとんでもないことになってしまうかもしれない、そんな危うさを見せられると、母親として女性としてなにが正解なのか登場人物と一緒に深く悩んでしまう。

そして作品の冒頭に起きてしまう悲劇の被害者「ユウ」と加害者は誰なのか…という疑問と『明日の食卓』というタイトルが意味するところを最後まで見た方の心の中で何度もかみ締めていただける物語です。


監督は『64』などの瀬々敬久、原作は椰月美智子（『十二歳』で講談社児童文学賞を受賞）、三人の母を演じるのは実力派女優、菅野美穂、高畑充希、尾野真千子。三人のユウ君を演じる少年たちに加え、周りを囲む登場人物たちも本当にクセ者ぞろいで感嘆します。


この作品は別世界に住むとんでもない母親が息子を虐げてしまうという映画ではなく、私やママ友が起こしてしまう可能性のある身近な出来事の物語です。誰かや何かを批判するのではなく、子どもの貧困、高齢化社会、ハラスメント等に焦点を当てて考えさせてくれる側面も持ちます。最後に小さな希望の光は見えるのか、どうぞお楽しみにしてください。
劇場内は換気と快適な温度を心がけておりますが、ひざ掛けの貸し出しは休止しておりますのでご心配な方は一枚羽織るものがあると安心です。是非是非お待ちしています。